重賞制覇レポート『タイトルホルダー』岡田スタッド編(弥生賞)

2021/03/29

カテゴリ:馬のはなし / 色々なはなし / 人のはなし / Pacallaオリジナル

マカヒキ、ヴィクトワールピサなどクラシックウィナーを送り出した弥生賞ディープインパクト記念。
今年、鮮やかに逃げ切ったのはタイトルホルダーでした。ソダシが制した2020年札幌2歳Sからメイケイエールが勝ったチューリップ賞まで、生産馬が世代の重賞19連勝中だったノーザンファームを、岡田スタッドが止めました。

ホープフルSでは2,3番手の競馬でしたが、今回は馬任せにハナを奪うと、そのまま押し切り。昨年の2歳王者ダノンザキッドには2度敗戦を喫していましたが、末脚を封じて見事リベンジを果たしました。

「2着馬がバテていたぶん、ダノンの脚いろが良く見えたけど、危なげなかったね。一番先に電話をよこしたのが(ノーザンファーム代表の吉田)勝己さんだったよ」と岡田スタッド代表の岡田牧雄さんは明かします。
「『(連勝が止まって)少しは悔しい思いをしているだろう』と言ったら、『ドゥラメンテだ。やっぱりドゥラメンテはすごいだろう。うれしい。最高!』だもん。おめでとうも言わず、デアリングタクトの桜花賞の時と一緒だよ(笑い)」※リンク先文中にエピソードがあります。

タイトルホルダーを皐月賞有力候補に押し上げた大きな1勝は、父ドゥラメンテにとって待望の重賞初勝利でもありました。

産駒が重賞初制覇を飾ったドゥラメンテ

ちょうど1年前、タイトルホルダーが2歳の3月のことでした。
ビッグレッドファームから3頭、コスモヴューファームから2頭、そして岡田スタッドからタイトルホルダーをビッグレッドファーム明和へ連れて行き、2歳馬計6頭で追い比べをしたといいます。その時は6番目に入線。勾配のきつい明和の坂路に慣れていない岡田スタッドの馬は離されてしまうことが多いそうですが、それなりに離されず走っていた姿を見て「能力はうちの馬の中では一番」だと牧雄さんは自信を深めたようです。

「2歳の普通キャンターは手前を変えたらブレるけど、この馬は芯がしっかりしていてブレず、真っすぐに走る。体がしっかりしている。あとは、姉のメロディーレーンが小さいから、最初のころはどこまで大きくなるかと心配ばかりしていた」

メロディーレーン(森田調教師提供)

弟も小柄な体では生まれましたが、2018年セレクトセール当歳セッションに上場。
サウンドトゥルーなどを所有した山田弘オーナーが2000万円で落札しました。

実は山田オーナーには、母のメーヴェに出資しようとしましたができず、その初子のメロディーレーンは体が小さかったために出資を断念したという経緯があったそうです。「『これを逃したら…』と言って、すごく意地があったみたい」と牧雄さん。執念の先にオーナー自身初のJRA芝重賞のタイトルが待っていました。

タイトルホルダー(2018年4月)

タイトルホルダー(2019年4月)

タイトルホルダー(2020年4月)

 

母メーヴェはLEXが英国・タタソールズオクトーバーセールで購入。
父モティヴェーターは英ダービーを勝ち、母父シェアリーハイツは英愛ダービーを制覇。
母系には、英1000ギニー、サセックスSを勝ったオンザハウス、英チャンピオンSなどGIを3勝したクラックスマンなどの名前が並びます。

「黒光りする、いい馬。血統背景もしっかりしているしね」と牧雄さんはうなずきます。
12年のアルゼンチン共和国杯を最後に引退したメーヴェが今までに生んだ産駒はメロディーレーン、タイトルホルダーと2頭のみ。なかなか子宝には恵まれませんが、2頭ともに競馬ファンを沸かせる活躍を見せています。

メロディーレーンは340キロ前後のきゃしゃな体で、牡馬相手の菊花賞では5着。条件馬ながらグッズが発売されると、すぐに売り切れてしまうようにファンの心をがっちりとつかんでいます。

メロディーレーンの母メーヴェ(ノルマンディーオーナーズクラブ提供)

母のメーヴェに似た顔のメロディーレーン(森田調教師提供)

金鯱賞のレース直後、2着の枠馬に入ったデアリングタクトが勝ったギベオンをにらみつけているように見える写真が話題になりましたが、タイトルホルダーも同じだと牧雄さんは言います。

「性格はきつい。ただ、人間に対してはおとなしくて、馬にはきつい。併せ馬で負けないし、馬に対しては絶対的王者で、放牧地では親分なんだよ。デアリングも人に対してはおとなしいんだよ。タイトルホルダーは馬に対して、なんで俺のそばに来るのか?とか、そういう性格なんじゃないかな。でもそういうのは大事。人間の言うことを聞くからちゃんとトレーニングができるし、それでいて馬には絶対負けない」人間の指示にきちんと従うことができるから肉体が鍛えられ、レースに行くと生まれ持った勝負根性が顔をのぞかせてくる。それがしっかり結果に結びついています。

弥生賞を勝ったことで一躍、皐月賞有力候補となって周囲はざわつき始めましたが、牧雄さんは冷静さを失いません。

「メロディーレーンやお母さんと一緒でこの馬はおくて。だから、(さらに良くなってくるのは)秋だと思っている。4歳、5歳になれば絶対に強くなる。うちでは一番走るし、ダービーに出てくるくらいの馬にはなると思うけど、(クラシックの中でも)一番使いたいのは菊花賞なんだよ」

晩成血統でありながら、東スポ杯2歳Sでダノンザキッドの2着に入るなど、早い時期から重賞戦線で好走してきたタイトルホルダー。上昇カーブを緩やかに描きながら迎える1冠目、皐月賞はどんな走りを見せてくれるでしょうか。

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