Pacalla馬図鑑 アハルテケ編

2021/07/15

カテゴリ:馬のはなし / Pacallaオリジナル

こんにちは!Pacalla 編集部のやりゆきこです。『Pacalla 馬図鑑』シリーズは、さまざまな馬の品種を紹介していく連載企画です。馬体の特徴や性質などの基本情報だけではなく、その馬にまつわる逸話などの小ネタ(?)や私の個人的な見解やをちょいちょい織り交ぜながら(そこは、茶飲み話くらいに思ってくださいませ!)、お話していくちょっと変わった図鑑です。どうぞよろしくお願いします!

 


競馬ファンならみんな知ってる⁈ 東京競馬場の『あの像』

 

では、さっそく本題にはいりましょう。まずは、こちらの写真をご覧くださいっ!
この像を見たことある方、多いのではないでしょうか? そうです、この像は東京競馬場の府中競馬場正門前駅の改札を出たところにある黄金の馬の像…

Pacalla編集部、黄金の馬『アハルテケ』に会いに行ってきた!▲いつしかのPacalla 編集部。左がやりです。まだ若い…。

実はこの像、金ピカに塗られているのにはちゃんと理由があるんです。それは、この像が実在する黄金の馬『アハルテケ』の像だからなんですね。今日はそのアハルテケについてお話していきたいと思います!

 

 

『万能の馬』と呼ばれたトルコマンの血を引くアハルテケ

アハルテケ

▲きらめく馬体に惚れ惚れします…!

 

アハルテケの原産国は中央アジアのトルクメニスタン。上下をウズベキスタンとイランに挟まれた場所にある国です。希少な種でもあり、現在は世界に3000~3500頭ほどだそう…。

大昔、トルコマンという『何でもできる!』『万能の馬』といわれた品種の馬がいた(現在は絶滅※1)のですが、その直系の子孫ともいわれています。

※1: 現代においてもトルコマンという馬は存在するようですが、これはアハルテケの直系といわれているトルコマンとは別種として考えられています。(参考書籍:世界で一番美しい馬の図鑑/タムシン・ピッケラル著)

中央アジア 地図 トルクメニスタン

▲中央アジアのこの辺にある国です~!(黄色部分)

 

アハルテケはサラブレッド等と同じ『軽種』に分類され、体高は資料によって多少の差があるものの143~163cmほど。そして、とってもスレンダー! サラブレッドだって相当なスレンダーボディだと思いますが、アハルテケはそれを超える細身です。

例えばアハルテケのお尻とサラブレッドのお尻を比較してみると(下図参照)、サラブレッドの方が丸みを帯びていて、アハルテケは三角み⁈ を帯びているイメージです。お腹の部分もサラブレッドより脂肪がなさそうに見えますね。

アハルテケとサラブレッド比較

▲左がアハルテケで右がサラブレッド。差がわかりやすいように少し極端な例にしてます。

 

しかし、スレンダーといってもガリガリで貧弱な感じではなく、鍛え上げられた陸上選手のような印象。実際のところ、アハルテケは脂肪が非常つきにくい筋肉質タイプだそう。そして、とてもスタミナがある馬とのことです。そのためエンデュランス競技でも重宝されています。

過去には、アハルテケの持つスタミナをサラブレッドにもどうにか持たせられないかと、アハルテケとサラブレッドの交配を進めていた時期もあったそうなのですが、そう簡単によい結果は出ず…。現在はあまりこのような交配は行われていません。

顔の特徴としては、大きい耳とアーモンド型の目(…まさにアーモンドアイ!)を挙げられることが多いようです。個人的に耳は『大きい』というよりも、細長くてウサギっぽいイメージがあります。目は、馬の目ってだいたいアーモンド型なんじゃないの?と思ったりもしたのですが(笑)、なんといいますか、アハルテケの目は〝リアルアーモンド″って感じがします! また、タテガミの量は少なめです。

アハルテケの目(アーモンドアイ)

▲あまり大きな目ではなくて、少し切れ長?のリアルアーモンドアイ

 

最大の特徴、黄金に輝く毛色のヒミツ!

ここまで見た目の特徴をいろいろお話してきましたが、アハルテケの最大の特徴である黄金に輝く毛色についても見ていきましょう。アハルテケの『ゴールド』といわれる毛色の分類は、本当に細かく分かれているそうなのですが、金色に見える毛色の中でも比較的多いのが佐目毛・河原毛・月毛です。特に佐目毛は光り輝いて見えやすいそう。

アハルテケ 金色の輝く秘密▲でもこの毛色ってアハルテケ以外の品種でも見ますよね…?

 

でも佐目毛、河原毛、月毛ってアハルテケじゃない馬でも見かけますよね? では、なぜ彼らはアハルテケのように輝かないんでしょうか? 答えはアハルテケの毛の生え方にありました…!

 アハルテケの毛は絹のような細く、それが皮膚にピッタリ沿って生えているそうなんです。そこに強い太陽光が当たることによって黄金の輝きが発生するということのようです。また、丁寧なブラッシングで汚れをしっかり落としておくことも大事なんだそうですよ!

 

▲同じ馬でも太陽光の当たり方によってこんなに違う!

 

あまり知られていませんが、アハルテケには鹿毛や芦毛、青毛などの毛色もいます。でも、このような(光輝くような)珍しい毛色が増えたのはなぜなんでしょうか?

Pacalla編集部、黄金の馬『アハルテケ』に会いに行ってきた!

▲ゴールド以外のアハルテケもいる!

 

それについてはアハルテケの原産国トルクメニスタンの国土85%を砂漠(カラクム砂漠)が占めていることに理由がありそうです。スタミナがありタフなアハルテケは、砂漠に暮らす遊牧民の生活でも非常に力を発揮した馬でした。砂漠で暮らしていくにあたり、砂に似た色の方が目立たずに生活できるというメリットがあったため多く生み出されたといわれています。(ちょっと違うけど、野生動物の擬態みたいですね!)

 

五輪では金メダルも。幅広い分野で活躍するアハルテケ。

 

日本ではほとんど見る機会がないため、あまり想像がつきませんが、万能の馬トルコマンの直系の子孫ということで、アハルテケは本当に幅広い用途に使われています。
競馬・エンデュランス・障害馬術・馬場馬術…まさに万能。1960年のローマオリンピックでは馬場馬術でアブセントという名のアハルテケが金メダルも獲得しています(ちなみにアブセントは1964年の東京五輪にも来ていました!)。
加えて、非常に美しい容姿を持つため、2016年にはロシアのプーチン大統領が、バーレーン国王にアハルテケをプレゼントしたというエピソードも。これは日本でも話題になりましたね!

 

◆◆◆

いかがでしたか? 今回は、黄金の馬『アハルテケ』についてお届けしました。感想や質問もお待ちしております♪ 次回は、『アパルーサ編』を予定しておりますので、ぜひお楽しみに!

 

<協力>

・アハルテケ長谷川牧場(2019年に日本国内で初めてアハルテケの繁殖に成功)

アハルテケ長谷川牧場の取材記事はこちらです≫

 

<参考文献>

・図説 馬と人の歴史全書 (日本語) 単行本|キャロライン デイヴィス(1997年発行)

・世界で一番美しい馬の図鑑 | タムシンピッケラル(2017年発行)

・ウマの博物図鑑|デビー・バズビー/カトリン・ラトランド(2021年発行)

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