重賞制覇レポート『モズべッロ』村田牧場 編(日経新春杯)

2020/02/17

カテゴリ:馬のはなし / Pacallaオリジナル

ウインブライト(最優秀4歳以上牡馬、コスモヴューファーム)、コントレイル(最優秀2歳牡馬、ノースヒルズ)、シングンマイケル(最優秀障害馬、ヒカル牧場)と2019年度のJRA賞に3頭が選出されるなど、昨年の秋から絶好調の新冠生産馬。村田牧場もモズベッロが日経新春杯を制し、年が明けても勢いの続く波に乗りました。

牧場が連なるサラブレッド銀座2丁目に構える村田牧場。「同じ週に大狩部牧場さん(クリスタルブラックが京成杯を制覇)も勝ちましたね。また、同じ町内のコスモヴューさんやノースヒルズさん、近隣のヒカル牧場さんからもJRA賞馬が出ているので励みになります」。取材に対応してくれた専務の村田康彰さんは笑みをこぼしました。


お産シーズンということもあって、レースは牧場で見守りました。3勝クラスからの格上挑戦でしたが、2番人気の支持。「ちょっとチャンスがあるかなという気持ちはありましたけど、重賞ですからね。今回は掲示板に載ってもらって、どこかで自己条件を勝ちながら、重賞戦線に行ってくれればと思っていました」と振り返った康彰さん。しかし、いい意味で予想は裏切られました。

中団で脚をためると直線で一気に弾け、後続を2馬身半突き放す完勝。京都新聞杯9着、セントライト記念17着と昨年ははね返された重賞のタイトルをあっさりつかんでみせました。「脚を使える状況であれば、そこそこは来てくれると思っていました。軽ハンデ(52キロ)もよかったと思いますし、馬自身もだいぶ成長しましたね。伸びが出てきて子供っぽさが抜けていました」と康彰さんは3歳時とは違う姿に目を見張ります。

モズベッロの母、ハーランズルビーは康彰さんが村田洋幸社長と2012年に米国・キーンランドのノベンバー繁殖セールで購入しました。1000頭弱のなかから40頭くらいまで候補を絞ったうちの1頭。とても柔らかい歩様が気に入ったそうです。「アメリカの馬はごつくてパワフルな動きをする馬が多いですが、この馬はしなやかに歩いていたんです。SS系をつけたら日本では合うだろうな、と」と康彰さん。

そしてもうひとつ、こだわりの点もクリアしていました。「セリで買う時は、馬房から出てくる際にどんな表情かというのも大事にしています。ハーランズルビーは若い女性が連れてきていたんですが、持ち手に従順で大人しく扱いやすそうな馬だと感じました」

モズベッロの母、ハーランズルビーハーランズルビー親子

ハーランズルビーにはマンハッタンカフェ、ハーツクライ、ディープブリランテ、マジェスティックウォリアー、ヘニーヒューズと、これまで違う種牡馬を配合してきましたが、ディープブリランテとの間に生まれたモズベッロはまさしく思い描いていた通りのタイプになりました。

「柔らかくて、バネがあって、いかにも芝向きの体質でしたね。お母さんと同じように、牡馬でも品があって。しなやかな筋肉はディープインパクト系なのかなと思いましたね」と康彰さん。牧場時代は「将来的にバネにつながりそうな」(康彰さん)緩さがあり、早熟ではなかったことから今後の成長力も見込めそうです。

ハーランズルビー産駒

モズベッロが手にしたタイトルは、村田牧場にとってケイアイドウソジンで制した2014年阪神スプリングJ以来のJRA重賞。2006年から2013年まではJRAで年間2けた勝利を挙げていましたが、翌年からは1けた勝利が続く苦しい時期がありました。それを打破するため、様々な改善を行ってきました。

生産馬の運動量を増やすため、1歳分場の放牧地を拡張。モズベッロの1歳下の現3歳世代からは冬の昼夜放牧も開始し、カイバの内容も改良しました。その努力が実を結び、昨年は過去最高の年間19勝と大きく躍進しました。「これじゃいけないとずっと思っていたんです。今ある状況のなかで、何ができるかなとやってきたことが結果に結びついたんでしょうね。餌をたくさんやっても吸収しなければ意味がないですし、腸内環境も良くしようと獣医師さんとも相談しながらやった結果ですよね」と康彰さん。

生産馬の評価は上がり、昨年のセレクションセールでは生産馬のオーシャンフリート2018が3600万円の最高価格を記録。アメージングムーン2018も3200万円の値をつけました。さらに、現3歳世代は10頭がデビューして7頭が勝利。こだわっている勝ち上がり率も、13頭がデビューして8頭が勝利を挙げた現4歳世代からアップしました。

「今はうまくいっていますが、このままだったらどこかでまた停滞するでしょうからね。みなさん、ずっと走ってきてもそこで止まることはないですよね。とことん上がいるから、ちょっとでも停滞すると勝ち星を食われますから」。康彰さんが言うように向上心を持って改良を繰り返しながら、歩みを止めなかった村田牧場。

2月2日にはハーランズルビーが父ドゥラメンテの牝馬を出産。特徴的な流星を持つ品のある顔立ちは母譲りでしょうか。村田牧場と言えば、短距離G1を2勝したローレルゲレイロの祖母にあたるモガミヒメの牝系がすぐに思い浮かびますが、洋幸さんと康彰さんがアメリカで見つけてきたハーランズルビーの牝系も長く、そして太く続いていきそうな気がします。

村田牧場 モッズヘッロ

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