東京競馬場『JRA競馬博物館』6つの見どころ
2022/11/09
カテゴリ:色々なはなし / Pacallaオリジナル
こんにちは! Pacalla編集部のやりゆきこです。皆さんは『JRA競馬博物館』に行ったことがありますか? 今回は競馬の普及・発展、歴史、競馬開催の舞台裏など、競馬のさまざまな情報を知ることができる『JRA競馬博物館』の見どころをご紹介します!
※この記事の取材は2022年10月13日に行いました。
JRA競馬博物館とは?
JRA競馬博物館(以下、競馬博物館)は東京競馬場の敷地内にある博物館です。1991年に開館、かつては東京競馬場の厩舎(※1)があった場所に建てられました。
競馬博物館の前身は競馬場内にあった競馬の殿堂メモリアルホール。1984年に発足した顕彰馬制度に伴い、顕彰馬を紹介する場所でした。そこが手狭になってきたことをきっかけにできたのが現在の競馬博物館です。現在は顕彰馬だけでなく、さまざまな競馬の歴史や文化にまつわるものを展示しています。今回はそんな競馬博物館の6つの見どころを、学芸員の秋永和彦さんにお伺いしました。
(※1)現在は、美浦トレーニングセンターに移動
秋永和彦さん
子どもの頃から歴史や博物館が好きで、大学では中国の古代史を専攻。在学中、ゲームのダービースタリオンをきっかけに競馬に興味を持つ。中国の古代史と馬は密接な関係があったことから馬の博物館の学芸員に。10年ほど勤めた後、2009年4月に競馬博物館へ異動し現在に至る。
その1:300年にわたる競馬ロマンの道のりを伝える【展示室1】
最初にご紹介するのは、競馬の歴史を伝える常設展エリア。300年にわたる競馬のロマンを知ることができます。さっそくお話を伺いました。
「オープンした頃から変わらずにある、当館の軸となる展示になっています。競馬のおこりからイギリス、フランス、アメリカ、オーストラリアとニュージーランド、さらには他の欧州やアジアの競馬の歴史を紹介するとともに、日本の競馬史についても解説しています。日本で最初の洋式競馬が行われた横浜、続いて函館、神戸といった港町の歴史はもちろん、東京の靖国神社や不忍池で行われた昔の日本の競馬などについても展示しています」(秋永さん)
展示室1で、編集部がとくに気になったのはこちらの展示。昔のレースの様子が、有名な絵画をもとに立体で再現されています。人形も一人ずつ、絵に忠実につくっているので、「あ、同じ人が二人いた」…ということはないのだそう!
「1つ目は、イギリスのテートギャラリーに展示されているウィリアム・フリスが描いた『The Derby Day』という150年以上前の有名な絵画を立体再現したもの。2つ目は、横浜の根岸競馬場ができる前に、イギリス軍の練兵場で幕府の役人たちがレースを行った様子を描いた絵を再現しています。このレースは、どうやら日英交流のために行われたものだったようです」(秋永さん)
その2:中央競馬の仕組みを知ることができる体感型エリア【展示室2】
2018年にリニューアルされたという展示室2では、中央競馬開催の仕組みや競走馬の血統、歴史など、競馬のさまざまな側面について知ることができます。とくに目を引くのは入口にある実物大のゲートと、スクリーンが埋め込まれた巨大な絵巻…!
(写真提供:JRA競馬博物館)
「こちらの実物大ゲートでは、お客様にスターターを体験していただけます。スターターは単に旗を振っているだけのおじさんと思われていることも多いのですが(笑)、実はゲートを開けるのもスターターの仕事なんです。ぜひ体験してみてください。
その他、壁にスライドを映し出す東京競馬場歴史絵巻は、絵巻のようにつづられた歴史ある写真の中から、ご自身の好きな時代に応じて自由にエピソードを選ぶことができます。東京競馬場史はもちろん、日本ダービー優勝馬の歴史など、いろいろなスライドをご覧いただけますよ」(秋永さん)
またこのエリアには、少し前に障害レースの魅力について取材した編集部としては、見逃せない展示物がありました! 障害レースに使われる障害物(実物)です。こんなに近くで見られる機会はなかなかありません!
【今さら聞けない競馬学】障害レースを愛するトラックマンに、その魅力を聞いた!≫
その他、各歩様で馬が歩いた(走った)場合の一完歩がどのくらいの大きさかを体感できるコーナーや、馬装について学べるコーナーなども。
その3:4面スクリーンの劇場型アトラクション!【ライヴシアター】
展示室2の他にも、2018年のリニューアルで増えたアトラクションがあるということでご紹介いただいたのがこちら。何やら不思議な形をしたスクリーンです…!今回はサラブレッドが生産牧場で生まれてからデビューするまでの道のりを知ることができる、(Pacalla編集部的に)とても親近感のわく映像を見せていただきました。
「ライヴシアター『Thoroughbred』は、4面スクリーンと5.1chサラウンドによる臨場感あふれる映像と音声を体感できる劇場型アトラクションです。先ほど見ていただいたのは『競走馬への道~栄光を目指して~』という映像プログラムになります。他にも、子どもたちにウマという動物について知ってもらう『サラブレッド・ラボ』、日本ダービーのさまざまな映像をお見せする『“競馬の祭典”日本ダービー~馬と人とが織りなすドラマ~』の2作をご覧いただけます」(秋永さん)
その4:競馬以外の馬文化も発信!馬の学び舎(まなびや) ミュージアム・ホール
博物館内には『馬の学び舎 ミュージアム』という大型ホールも。等身大の馬像模型の展示、プロジェクター型150インチスクリーンによる映像上映のほか、競馬や馬事文化に関する各種展示が行われています。
「コロナ前はこのホールでトークショーを行ったりもしていました。現在は、サラブレッド、ばん馬、日本在来馬の等身大模型を常設しています。そのほか競馬に限らず、馬の博物館で展示しているような、馬文化にまつわる展示を行っています。今年の10/29(土)~2/19(土)までは相馬野馬追の『ふるさと絵画展』を開催予定です。
また、馬にまつわる仕事を順番に紹介する企画展示も行っています。現在は獣医師を紹介しているんですが、これまでに騎手、調教師、厩務員などの仕事を紹介してきました」(秋永さん)
映像上映については、JRA競馬博物館オリジナルのアニメ『馬物語』と『HORSE DREAMER』を定時上映しているほか、現在はJRA競走馬総合研究所や相馬野馬追を紹介する映像、競馬を支える獣医師たちの仕事を紹介する映像を見ることができるのだそう。
その5:競馬博物館でしかできない?!すばらしい特別展示の数々
競馬博物館では春と秋の東京競馬開催に合わせて、さまざまなテーマで特別展示を行っています。今回、取材したタイミングで拝見したのは特別展『生誕130年記念 尾形藤吉 ~“大尾形”の系譜~』です。
「先週からちょうど秋開催がはじまったので、それに合わせて開催しているのがこちらの特別展です。今回の尾形藤吉さんはJRA通算勝利数1位の調教師で、もちろん馬をたくさん育ててきた人なんですけれども、たくさんの『人』を育ててきた人でもあり、その系譜は現役の調教師や騎手にもつながっているんですね。今回は、尾形藤吉調教師が歩んできた道のりや、その偉大な功績を紹介しています。また門下生の1人であり、今年JRA調教師顕彰者に選出された藤沢和雄先生を紹介するコーナーも設けています。3年前から準備をしてきた、私としても非常に印象深い特別展になっていますので、ぜひご覧いただきたいです」(秋永さん)
特別展「生誕130年記念 尾形藤吉 ~“大尾形”の系譜~」の系譜の詳細はこちら>
開催される特別展は『競馬博物館』の名にふさわしい、完全に競馬色の強いものが多いそう。過去の特別展にはどんなものがあったのでしょうか。
(写真提供:JRA競馬博物館)
「コロナ前でいうと、2018年の秋には『メジロ牧場の歴史 ~“白と緑”の蹄跡~』という特別展を開催しました。名門メジロ牧場にまつわる貴重な資料を展示するとともに、メジロライアンに騎乗していた横山典弘騎手をはじめ、多くの調教師や騎手の皆さんにインタビューを行うことができました。
他には、JRA60周年(2014年)を記念してという特別展を開催したことも印象に残っています。英国ジョッキークラブは、ニューマーケットにある競馬に携わる貴族たちの社交クラブとして設立された歴史ある団体です。そこから競馬にまつわる絵画10点をお借りして展示しました。英国ジョッキークラブというのは、競馬界にいてもなかなか入り込めるところではないので、非常に貴重な展示になりました」(秋永さん)
その6:競馬博物館の前身から引き継ぐ『競馬の殿堂』
最後は、記事冒頭でも少し登場した顕彰馬を展示するエリア『競馬の殿堂』です。ここでは、とくに輝かしい功績を残し、JRAの顕彰馬に選ばれた馬たちの活躍を後世に伝えるため、絵画やブロンズ馬像、関係資料を展示しています。他エリアとは少し雰囲気の違った、神聖な空気が感じられました。
「競馬の殿堂では、現在34頭の顕彰馬と顕彰者の騎手7名、調教師11名について展示しています。馬については戦前の馬から、一番最近でいうとキタサンブラックまでですね。ここにはいろんな世代のお客様がいらっしゃいます。年配の方だとハイセイコー世代なんですという方、またウマ娘の影響で最近競馬に興味を持ってくださった若い方もいらっしゃいますね。ウマ娘ファンの方々にはメジロマックイーンとトウカイテイオーが並んで展示されているエリアが人気のようです」(秋永さん)
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JRA競馬博物館、6つの見どころはいかがでしたか? 私個人としては、館内をじっくり見てまわったのがずいぶん前だったので、いつの間にか新しくなっているエリアがたくさんあって、とても新鮮な気持ちで楽しむことができました!(リニューアル後も取材でお伺いしたりはしているのですが、全部はまわれていなかったんです…!)
「競馬って、写真を撮ったり、騎手を推したり。人それぞれの楽しみ方がありますし、レースを見るとか、馬を見るだけでももちろん楽しいものなのですが、競馬が日本で行われるようになった経緯や歴史なども知ってもらえたら、競馬がより一層おもしろくなると思うんです。ぜひ、競馬博物館に足を運んでいただき、競馬の歴史にも目を向けるきっかけにしていただけたら」と秋永さん。
開催日はもちろんですが、3月-11月は月・火曜日以外、12月-2月は月・火・金曜日以外…と開催日以外も入館することができますので、ぜひ時間をとってゆっくり回ってみていただけたらと思います!
JRA競馬博物館の開館日、開館時間などについてはこちらをご覧ください>