いまさら聞けない競馬学『パドックでよく見る矯正馬具』をおさらい!

2021/03/22

カテゴリ:馬のはなし / 色々なはなし / Pacallaオリジナル

こんにちはPacalla編集部のやりです。

Pacallaをいつも読んでくださっている皆さんは、『メンコ』や『ブリンカー』といった矯正馬具の名前を聞いたことがあると思います。パドックで見たことがある方も多いのではないでしょうか。
ですが、中には各矯正馬具の細かな用途の違いを聞かれたら、もしかすると答えに詰まってしまう方もいるかもしれません……!
そう、かくいう万年競馬初心者の私は結構怪しいです‼(汗)。だってみんな見た目がちょっとずつ似ているんだもの…。そんなわけで、今回はパドックでよく見かける矯正馬具について一緒に学んでいきましょう!

 

 

◆そもそも、なぜ矯正馬具が必要なのか?

矯正馬具は馬をレースに集中させ、最大限に能力を発揮できるように装着されるものです。そもそも馬は、とても臆病な草食動物! さらに自然界で捕食者から逃れるために発達した350度にわたる広い視野と3万ヘルツ※まで聞こえる聴覚を持っています。
しかし、この視野や聴力が、臆病な性質と相まって、時にマイナスに働いてしまうことがあるようです。
そこで、レースの際には視覚や聴覚を制限する矯正馬具をつけることがあるんですね。

※人間の可聴域上限は2万ヘルツ程度

 

さて、ここからはパドックでよく見かける矯正馬具についてご紹介していきたいと思います!

 

◆メンコ(および耳覆い)
▲耳覆いなしのメンコ

馬の顔につける覆面のことをいいます。メンコには耳覆いが付いていないものと付いているものがあります。(ちなみに、私はこの記事を書くまで、メンコにはすべて耳覆いが付いていると思っていました…)

耳覆いがついていないタイプのメンコは、前にいる馬の蹴り上げた砂や芝の塊が顔に飛んでくるのを気にする馬に使用します。通常は耳覆いがついたものが多く、風の音や歓声を遮断する効果があります。
しかし、音を遮ることで集中力が高まる一方で、音が聞こえないことによってレース本番では能力が発揮できないという場合もあり、パドックや返し馬のときだけ耳覆い付きのメンコをつける馬もいます。
そのような場合は取り外しがしやすいよう、頭絡の上から装着するタイプのメンコを使用します。

▲耳覆い付きのメンコ

また覆面部分がなく、耳覆いだけのもの(イヤーネット)を使う場合もありますが、下図のような耳覆いはパドックのみで使用することが多いようです。

▲イヤーネット

 

◆ブリンカー
▲ブリンカー装着時

メンコの目の周りに装着し、馬の後方の視界を遮るカップ状の馬具です。遮眼革(しゃがんかく)または遮眼帯(しゃがんたい)ともいわれています。レース中にほかの馬を怖がる臆病な馬や、よそ見をするなど集中力に欠ける馬に用いられます。両目に装着されることが多いですが、片側に寄れてしまう馬などクセや気性によっては片目だけに装着したり、カップの深さを調整したりする場合もあるそう。素材は合成ゴムやプラスチックが多いようです。レースの際にJRAが事前に装着の有無を発表している馬具でもあります。

 

◆シャドーロール


頭絡の鼻革(目と鼻の間)に装着されるボア状の馬具です。羊毛やアクリル素材のものが多いそう。馬の視界の下の方(脚元など)を見えにくくすることで集中力が増すといわれており、自身の影に驚く馬やハロン棒に驚く馬などに用います。また、見えにくくなった脚元を見ようと馬が頭を下げるため、首の高い馬のフォーム矯正に使われることも。

1994年に牡馬クラシック3冠を達成したナリタブライアンは『シャドーロールの怪物』と呼ばれ、近年ではスノードラゴンの黄色いシャドーロールが『バナナみたいでかわいい♡』といわれ親しまれていました。

 

◆チークピーシーズ

目の外側、頬の位置につけて横や後方の視野を遮るボア状の馬具です。正式名称はシープスキン・チークピースですが左右両方に着けるため複数形で呼ばれることが多く、もみあげのように見えることから英語ではサイドバーンズ(もみあげの意)といわれることも。他にもオーストラリアンブリンカーなど、呼び名がたくさんある馬具です。JRAに装着を事前申請する必要がないため、枠順や天候がわかってから使用を決定でき、試しやすい馬具でもあります。

 

◆ホライゾネット

前述したメンコの穴の部分をカップ上のネットで覆った馬具で、ブリンカーの一種でもあります。パシファイアーとも呼ばれ、レース中に前方の馬が蹴り上げる砂が目にかかるのを気にする馬に用いられます。また視野が暗く狭くなるため、パドックや返し馬などでうるさい馬を落ち着かせる効果も期待されます。見た目が仮面ライダーのようといわれることも!

 

◆◆◆

いまさら聞けない競馬学『パドックでよく見る矯正馬具』、いかがでしたか? なんとなく名前は知っているけど…と思っていましたが、今回学んだ5つの馬具に関してはこれから堂々と説明できる…?かもしれません! いまさら聞けない競馬学シリーズでは今後も、ちょっといまさら人に聞くのは恥ずかしい競馬のお話をお届けできればと思っています。次回もよろしくお願いします!

 

 

<参考文献・サイト>

JRA サラブレッド講座(2021年3月閲覧) 

https://www.jra.go.jp/kouza/

競馬語辞典/奈落一騎・著/細江純子・監修(誠文堂新光社)

勝ち馬がわかる 競馬の教科書/鈴木和幸・著(池田書店)

そうだったのか!今までの見方が180度変わる 知られざる競馬の仕組み/橋浜保子・著(GUIDE WORKS)

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