東京オリンピック目前!初心者でも楽しめる『馬場馬術』観戦ガイド

2020/03/05

カテゴリ:色々なはなし / Pacallaオリジナル

 

こんにちは!Pacalla編集部です。
皆さんは『馬場馬術』という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 前回は日本ではマイナーな馬術競技の中でも、比較的よく知られている『障害馬術』の基本的なルールやオリンピックにおける大会の仕組みなどをご紹介しました。今回はさらに馬術競技を深掘りすべく『馬場馬術』という種目について、ご紹介していきたいと思います。
障害馬術のご紹介についてはこちら≫

 

馬場馬術とは?見どころは?

馬場馬術は20m×60mの競技アリーナ内で、馬が様々なステップを踏んだり、図形を描いたりし、その演技の正確さや美しさを競う競技です。一つひとつの運動(技)の出来栄えを競うという点では、フィギュアスケートに例えられることも。
オリンピックなどトップレベルの大会では『グランプリ』と呼ばれる最高難度の競技が行われています。そのような大会では、馬が左右の肢を交差させる技や、後ろの肢を中心としてその場で回転する技など、まるでダンスを踊っているかのような高度な演技が披露されます。選手はなるべく観客からはわからないように馬に指示を送り、馬がそれに応えて正確かつ雄大で華麗な動きをする、まさに人馬一体の演技が馬場馬術の見どころです。


クリスマスイベントでの馬場馬術の様子(北井裕子選手/黒木茜選手によるパ・ド・ドゥ)
※実際の馬場馬術競技の場合は人馬1ペアで行います。また本動画はクリスマスイベント時の様子のためコスチュームが通常の競技会とは異なります。「馬がダンスを踊っているかのような演技」の参考としてご覧ください。

 

馬場馬術の基本的なルールを知ろう

馬場馬術には、実施しなければならない運動(技)など、演技内容がすべて決められており、出場するすべての人馬が同じプログラムを行う『規定演技』と、決められた運動を取り入れて演技を構成し、音楽をつけて行う『自由演技』があります。オリンピックでは予選と団体戦決勝で『規定演技』、個人戦決勝で『自由演技』が行われます。

馬場馬術競技の様子

馬場馬術競技の審査は、複数の審判員が運動(技)ごとにつける0~10点の点数と、演技全体の印象について採点した点数を合計します。自由演技では、それに加えて音楽の解釈や図形のユニークさなど、芸術的評価もジャッジされます。演技後に、それぞれの得点を満点で割り、パーセンテージで表した得点率が高い人馬が上位となります。

 

▼馬場馬術競技の採点基準

上図を見ると、馬場馬術競技では、最終得点率において60%を獲得すれば、求められている運動はほぼできているということになります。ちなみに、世界チャンピオンの人馬はグランプリ自由演技で90%以上という驚異的な数字をマークしているそうです。

 

≪豆知識!自由演技における音楽審査のポイント≫

音楽をつけて行う自由演技では、その音楽も採点の対象です。その人馬の雰囲気にマッチしているか、馬の動きに合っているか、音楽も含め全体で一つの“演技”になっているかなどが審査のポイント。音楽のジャンルについては特に規定はありませんが、単なるBGMではなく、かと言って目立ち過ぎず、演技をサポートしてくれる音楽が理想だそう。

≪豆知識!馬場馬術の歩法は3つ、競技中に鞭を持つのはNG!≫

馬場馬術で使われる馬の歩法は、『常歩(なみあし)』、『速歩(はやあし)』、『駈歩(かけあし)』の3つだけ。競馬でおなじみのギャロップ(襲歩)は使いません。また馬場馬術の競技中は鞭の使用が禁止されています。この点も、競馬とは異なりますね。

 

馬場馬術の上級クラスで要求される難易度の高い技

難易度の高い技(ハーフパス)

馬場馬術では『馬の調教進度』によって競技のクラスが分かれています。国際競技では「セントジョージ賞典」→「インターメディエイト」→「グランプリ」の順にクラスのレベルが上がっていき、上のクラスに行くほど求められる運動(技)の難易度も上がります。

 

▼難易度の高い運動の例(一部)

上図に運動の内容をまとめましたが、『文章で書かれてもどんな技かわからない~!』という方も多いはず…。下記に日本トップクラスの馬場馬術選手、林伸伍さんがご自身のTwitterで馬場馬術の運動を実演した動画を公開されていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください!

 

≪豆知識!燕尾服はトップライダーの証≫

燕尾服燕尾服

グランプリ競技などを観戦していると、選手の皆さんは前丈が短く、後丈は長くセンターに大きなスリットが入った『燕尾服』を着ています。しかし、この服装は国際競技の上級クラス出場者が着用する衣装。つまり、トップライダーの証なのです。それ以外の国内競技などでは丈の短いジャケット(上らん)などを着用するのが通常です。
ちなみに、私たちが普段の生活で着ているジャケットには、後ろにスリットが入っているものが多くあります。これはもともと乗馬の際に生地が捲れない工夫として入れられたものの名残りなんだそう。

 

オリンピックの代表人馬はどうやって選ばれる?決勝までの道のりは?

オリンピックの代表選考の対象となるには、

(1)2020 年1⽉10⽇までに日本馬術連盟にオリンピック競技⼤会への出場希望を表明した選⼿であること
(2)2020年6月1日の時点でオリンピック競技⼤会の出場最低基準(MES)を満たし、ナショナルチームメンバーとして認定されている⼈⾺であること
(3)2020年1⽉10⽇時点で日本馬術連盟に登録があり、パスポート上※の所有者国籍が⽇本となっている⾺匹であること
※馬にもパスポートがあります。

以上3つの条件を満たしていなければなりません。

そして、上記の条件を満たした人馬の中から、2020年1月1日~5月24日の間に出場した国際大会のグランプリ馬場馬術競技の成績のうち、各人馬の『得点率が高かった3大会の競技成績の平均』を比較し、その上位4人馬を6月上旬にドイツで開催される大会に派遣。3大会+ドイツの成績をもとに選考されます。


また馬場馬術も、障害馬術と同様に『個人戦』と『団体戦』があり、個人戦と団体戦共通の予選を実施します。予選の団体上位8ヵ国が団体決勝に、個人上位18人馬が個人決勝に進みます。共通予選と、団体戦の決勝については『規定演技』を行い、個人戦の決勝のみ『自由演技』を行います。

 

≪豆知識!馬場馬術上級クラスの馬は8歳以上≫

オリンピックなどトップレベルの馬場馬術競技には、8歳以上の馬しか出場できないという規則があります。Pacalla読者の皆さんは、競馬ファンの方が多いので『8歳以上の馬』と聞くと、少し高齢なイメージがあるかもしれません。ですが、実は馬の8歳は人間の30代前半くらいのイメージ(意外と若い!)。
真っすぐに速く走ることを求められる競馬はでは若い馬が活躍していますが、 馬場馬術のグランプリで求められる細やかな動きは、すぐには身につきません。長い期間をかけてトレーニングを行う必要があるため、8歳以上という規定があるようです。

 


 

いかがでしたか?
これで障害馬術に続いて、馬場馬術の予習もばっちりですね。
コロナウイルスの影響が心配される状況ではありますが、順調にいけば数か月後には東京オリンピックが迫っています。Pacalla読者の皆さんの中には、『馬が好き!』という方がたくさんいらっしゃるはず。これを機にぜひ競馬だけでなく、馬術にも目を向けてみてください。

次回は、総合馬術についてお届けしたいと思います。こうご期待!

 

協力:日本馬術連盟
写真・動画協力:ホースフェスタ(ハーフパスおよびメダルの写真を除く)

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