エンジェルライトの功績
2018/03/15
カテゴリ:馬のはなし / 色々なはなし
エンジェルライトは今の前谷牧場を語る上で欠かす事の出来ない馬です。
彼女の功績を称えここに書き残したいと思い、書かせていただきます。
エンジェルライトの血統は、6代母オーマツカゼを起点に大牝系を形成しています。
オーマツカゼ自身も、カブトヤマ、ガヴァナーと2頭のダービー馬の姪であり、曾祖母は1903年生の輸入馬ビューチフルドリーマー(シンザン、メイヂヒカリ、テイエムオーシャンらの祖)と、日本競馬を第1回ダービー以前の時期から支えた超良血一族。
その中でも特に、1980年代以降もコンスタントに活躍馬を送り出しているのが、オーマツカゼの仔で1962年オークス馬オーハヤブサの一族で、その仔ワールドハヤブサに始まる千代田牧場の、ビクトリアクラウン、ニッポーテイオー、タレンティドガールら往年のスターホースから現在に至るまで発展し、活躍馬を送り続け、千代田牧場の手により脚光を浴びることになりました。
エンジェルライトの三代母、ビクトリアクラウンのラインからは、近年平安ステークスG3を勝利し、ダート5連勝を飾っているグレイトパールが現れ、今、このラインに再度注目が集まっています。
なぜ前谷牧場にとってエンジェルライトが欠かすことの出来ない馬なのか。
産駒たちの紹介と併せて前谷牧場とのドラマを書かせていただきます。
主な産駒
マイネルアナハイム(2004 牡 鹿 メジロライアン)3勝2着2回セントライト記念4着、精進湖特別 獲得賞金5,647万円
ユウキハングリー(2006 牡 鹿 デヒア)2勝2着7回3着8回 獲得賞金4621万円
アポカリプス(2007 牡 鹿 メジロライアン)3勝2着2回 獲得賞金2650万円
マイネルガブリエル(2010 牡 鹿 ファンタスティックライト)1勝
テンマティーニ(2011 牡 栗 ブライアンズタイム)1勝
以上のようにエンジェルライトの産駒は堅実で確実に勝ち上がる、そして2着、3着を量産し、馬主奉公な馬に成長してくれるのが売りです。
エンジェルライトは千代田牧場より一頭子返し条件で譲っていただきました。
父の当時の話しを聞くと、馬格があって当時活躍馬を量産していたビューチフルドリーマー系というのが魅力的だったみたいです。
千代田牧場とは私の祖父の時代からの付き合いで私の幼少期、牧場に来た飯田社長と馬の話しをするのが楽しみでした。飯田社長の馬への情熱、良い馬を生産したいという姿勢は海外から新しい血を導入したり、そのエネルギッシュさが伝統ある千代田牧場を成長させこの血を発展させたんだと思います。
人との繋がりでの巡り会い、エンジェルライトは父が千代田牧場に信頼され、付き合いがなければ家には来てなかったでしょうし、当時父がエンジェルライトに対して情熱を持って向き合ってなければ今には繋がってなかったと思います。生産者として、血を次の世代に繋いで行くのは使命なんですが、先人達の想いや情熱を繋いで行くのも我々の役目だと思っています。
アポカリプスの活躍によりオーナーである山上氏より新たに繁殖牝馬預託の話しをいただきまして、繁殖セールで二頭の繁殖を買っていただきました。それが後のディオスコリダーのお母さんエリモトゥデイ。
山上オーナーとは、私が実家に帰って来て間もない時からのお付き合いとなっています。
まだまだ若輩者の私に、託してくれたのは凄く嬉しく励みになり、良い繁殖をどんどん前谷牧場にと、陰ながら応援してくれる山上オーナーのためにも良い仕事を提供出来ればと思っています。
2012年テンマティーニはセレクションセールに上場し1,071万円で落札されました。
それは私が帰ってきて1番の高値で売れました。
それによって秋の繁殖セールで新しく繁殖を仕入れる資金にもなり、後のネイビーブルーがお腹に入っていたホーマンピクシーを購入いたしました。
これによりネイビーブルーを初のセレクトセール当歳上場という経験させていただき、青芝商事様という素晴らしいオーナーさんと巡り合わせてくれました。
2番子のトモジャヴァリはセレクションセール2,700万円という評価でご購入いただき、ラーメン一蘭社長の吉冨学様とのご縁を頂きました。
ダーレー時代の下積み時代、私はセリで高評価を受け、セリでのし上がると人一倍工夫して来たので嬉しさのあまりセリ場で涙が出ました。
忘れもしない出来事は2012年生まれのボイン。父がブライアンズタイムの女の子。
エンジェルライトの後継繁殖にと考えていた馬でした。預託馬を預かっていた三文字の名前を付ける事で有名な杉澤オーナーにご縁があってご購入頂きましたが、競走馬として良い成績が残せませんでした。
申し訳ない気持ちで一杯の私に『俺が欲しくて買ったんだから気にするな。名前が悪かったのかな』と言ってくれたその一言に救われました。
自分の息子くらいの私に、杉澤オーナーも私の馬育てに一任してくれました。
また良い馬がいたら売ってくれと後のガンコを見せた時も、『良い馬だな。あんたが良いと思って勧めてくれるなら買う』と即決してくれました。懐が大きくとても面倒見が良くて、自分の息子のように接してくれています。
付き合い始めて、私が杉澤オーナーに言った言葉
『私はまだまだ若いし、頼りないし、大手牧場みたいに資金も十分に無い。でも強い馬を作る情熱だけは大手牧場や他の牧場には負けません。帰って来て一番苦しい時に支えてくれた杉澤さんに、函館競馬場での口取りと重賞勝ちをプレゼントします。それまで支えて下さいね。』
その約束が昨年ガンコと函館競馬場で口取りが実現し、重賞勝ちもガンコで実現出来そうな所まで来ました。
もしエンジェルライトが家にいなかったら、今のような成績や馬主様とのご縁もなかったかもしれません。
どれか一つでも欠けていたら成立しなかった今の現状。エンジェルライトから始まったと言っても過言ではないと思っています。
エンジェルライトの血は残してあげられませんでしたが、彼女の功績は私達の心にしっかり刻まれ、感謝とともに代々語り繋いで行きます。