ギャロップ禁止の競馬って? 繋駕速歩競走について調べてみた

2019/02/08

カテゴリ:馬のはなし / Pacallaオリジナル

こんにちは、Pacalla編集部です。
皆さんは『競馬』と聞いたらどんな映像を思い浮かべますか?おそらくギャロップで駈けていく馬たちをイメージされる方が多いのではないでしょうか。
今回ご紹介するのはなんとギャロップ禁止の競馬『繋駕速歩競走(けいがそくほきょうそう)』です。

 

繋駕速歩競走とトロッター

『繋駕』とは乗り物に馬をつなぐという意味。
そして『速歩』は常歩と駈歩の中間の歩様で、人間でいうと軽いジョギングのような走り方。
この繋駕速歩競走は、繋駕車と呼ばれる一人乗りの二輪馬車を馬につないで“速歩”で走らなければならず、4本の肢のうちどれかが地面についてないと失格となってしまいます。ギャロップで走る平地競走に慣れている日本人にとっては一風変わった競馬です。

繋駕車繋駕車。乗る人はジョッキーではなくドライバーと呼ばれる

また、速歩のことを英語で『トロット』といいますが、この繋駕速歩競走に出走するのはスタンダードブレッドをはじめとする、がっしりとした体格で少し足の短い、『トロッター』と呼ばれる速歩が得意な馬たちです。
トロッターが速歩をしていると、別の種類の馬はそれに追いつくために駈歩になってしまうこともあるそう!

 

繋駕速歩競走のはじまり

そんな繋駕速歩競走ですが、その発祥は古代のローマ帝国において人気のスポーツであった戦車競走に由来しているといいます。
古代の戦車は馬が曳いていたというのは想像に難くないと思いますが、このような戦車を一般に『チャリオット』と呼びます。昨年大流行したインド映画『バーフバリ』の第1作目には巨大プロペラカッター付きのぶっ飛んだチャリオットが登場していましたが(笑)、ヨーロッパの古代人の墓の壁画に描かれたチャリオットを見るととてもシンプルで、繋駕速歩競走の繋駕車によく似ています。

チャリオット馬の頭数以外はほぼ一緒?

現在もイギリスやアイルランドを除いたヨーロッパの多くの国では、日本でいうところの平地競走よりも繋駕速歩競走の方が人気だそう。

フランスのヴァンセンヌ競馬場では『アメリカ賞』という繋駕速歩競走のG1レースが毎年開催されています。本レースは2013年に凱旋門賞と同等の観客動員数を記録し、世界最高峰の繋駕速歩競走のレースともいわれています。

ちなみにフランスで開催されるのになぜ『アメリカ賞』なのかというと、第一次世界大戦におけるアメリカ合衆国の参戦に、フランスが感謝の意を込めてこの名をつけたという背景がありました。

 

日本の繋駕速歩競走

日本でも、大正時代には戦場で車両を曳く馬の需要があったため、現在の日本中央競馬会の前身である日本競馬会でも繋駕速歩競走のレースがたくさん行われていました。 しかし太平洋戦争を目の前に、日本軍からレースの中止が指示されたため、馬たちは軍馬として戦場へ向かうことに。

戦後は、関西地域などで再び盛り上がりを見せていた時期もあったようです。
ですがサラブレッドの生産数・平地競走が増え、サラブレッドとトロッター両者の調教時間の調整が難しくなってきたこと、国内での平地競走の人気が伸びてきたことにより、繋駕速歩競走は縮小していくことになりました。
こうして繋駕速歩競走は、1968年の中京競馬場で開催されたレースを最後に中央競馬で廃止、1971年の盛岡競馬場でのレースを最後に地方競馬で廃止を迎えました。


 

ギャロップ禁止の繋駕速歩競走…いかがでしたか?
YouTubeに実際のレース映像がありましたので、こちらもぜひ見てみてください。

いろいろと調べているうちに、この目で直に見てみたい!という気持ちが抑えられなくなってきましたが、残念ながら現在日本で開催されている繋駕速歩競走は、毎年9月に北海道の別海町で行われている『馬事競技会』という草競馬のイベントのみとなっているようです。
競馬ファンの皆さん、ちょっと先ですが2019年秋の旅行のメインイベントに検討してみてはいかがでしょうか。

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