馬の視界とレース用馬具
2018/11/11
カテゴリ:馬のはなし / Pacallaオリジナル
PCの画面ばかり見ているせいか、最近老眼が始まった気がしてなりません。
みなさんこんにちは。Pacalla編集部のすもーる青木です。
今回のテーマは馬の視界とレース用馬具のお話!
馬の眼が見えている範囲
馬の視界は350度ほどと言われております。
首を動かさずに真後ろ以外はほぼみることが出来るということです。
片目の視野領域がそれぞれ210~215度程度で両目の視野領域が60~75度程度です。
後方の10度程度が死角になっていますが、ほぼ全方位同時に見えているという視野の広さ。
▼イメージ図
人間の場合、両目の視野領域が120度、全体(片目のみで見える範囲)で180度までが視野になります。
両目の視野領域
人間の場合は両目の視野領域が120度ありますが、両目でものを見る場合、ピント調節が働いたりすることで、視ているものを正しく認識することが可能になります。
その点、馬の両目視野領域は60度〜75度程度のため、人間よりも正しくものを認識することが苦手です。
これは肉食動物と草食動物の特徴として挙げられます。
肉食動物=捕食側
草食動物=被食側
それぞれ、捕食する側、される側、に分けられますが、
肉食動物の場合は、人間と同様に両目の視野領域が広く、全体の視野領域は前面に限られることが多いです。
これは捕食側の動物のため、狩る獲物をしっかりと認識して視界に捉えるためなんだそうです。
草食動物の場合は、両目の視野領域は狭いですが、全体の視野領域が広く、捕食動物が近づくのを察知するのに長けています。
草食動物の場合はまず全体を見て敵を察知、その後両目の視野領域で捕捉して逃走、という流れです。
常に全方位に注意をしているため馬は非常に敏感です。
草を食べているときに急に頭を上げてどこかを見るのは何か動くものが視界に入っている可能性が高いかもしれません。
競馬への影響と対策馬具
ただでさえ動く気配に敏感な競走馬たち、競馬場でレースするために競走馬はたくさん訓練を積みますが、
中には集中力に欠けてしまう馬もいるため、持てる能力を存分に発揮出来ないケースもあります。
そういった競走馬への対策として、競馬ではいくつかの馬具を使用してレースに集中させるようにしています。
多くの場合は視野を制限することで集中させるための馬具が多いです。
JRAのレースで使用が許可されている馬具をいくつか紹介します。
ブリンカー
馬の視界を制限する関係の馬具の中では比較的目にする機会が多い馬具だと思います。メンコ(馬に被せる覆面)と併用されることが多いです。
メンコの目の部分にプラスチックっぽい素材のカップが付けられていることがありますが、アレがブリンカーです。
ブリンカーは「遮眼革」とも呼ばれており、後方または横側の視界を遮ることで集中させる効果が期待できます。
カップ部分のサイズを変えることで制限する視界の範囲を調整しているそうです。
ちなみにメンコの役割は耳を覆うことで音に敏感な馬に周囲の音を聞こえにくくすることです。
シャドーロール
三冠馬ナリタブライアンの二つ名でも有名ですね。
下方の視界に気を取られてしまう馬に対して視界を制限する馬具。
こちらも競走馬では結構見る機会が多いと思います。
これも馬に合わせてサイズを調整しているそうですが、大きいシャドーロールだと見るからにもふもふしてて逆に気にならないのか心配になります。
ブローバンド
シャドーロールの額版。
このあたりからなかなか見る機会が少ない馬具になってきます。
こちらは上方や後方が気になってしまう馬向けの馬具。
頭を上げる癖のある馬につけて頭を下げさせる効果もあるそうです。
頭の部分に付けられるので、その姿がかわいらしいのも特徴。
チークピーシーズ
シャドーロールの左右版です。
こちらは左右や後方の視界が気になる馬向けです。ブリンカーと効果は似ているのかもしれません。
チークピーシーズは個人的にはブロウバンドよりも見る機会が多い気がしてます。
最近ですとオジュウチョウサンが付けていることで有名かもしれません。
ちなみに、
どこか一方向が気になる馬だけではありませんので、複数の視界制限を使用する場合もあります。
シャドーロールとブロウバンドを併用する場合もあります。
見たことも聞いたこともないですし出走許可されるのかも分かりませんが、全部付けることも出来るかもしれません。(見てみたい…)
おまけ
視界の制限ではないですが、他にも眼に関する馬具があります。
ホライゾネット
別名パシファイヤー。メンコの目の部分を網(ネット)で覆ったものです。
競走馬の中には前を走る馬が蹴り上げた砂が顔や目にかかるのを嫌がる馬もいます。
レース中に集中できるように砂がかかりにくくするための馬具です。
網の目が細かいので気づきにくく、一見ただのメンコだと思っていたらホライゾネットだったなんてこともありそうです。
透明半頭面(とうめいはんとうめん)
ホライゾネットとは違い、樹脂のカップでパッカリと覆ったもの。
眼疾病の予防、失明している馬の眼の保護などの目的なので、レースというより医療目的の方が近いかもしれません。
カップの中が曇り、視界が遮られることがあるため、JRAでは競走中の両眼への装着は認められていない。
引用:JRA – 透明半頭面
以上、馬の視界とそれにまつわる競走用馬具のお話でした!
馬によっては前述した馬具を付けることで良い成績を残すということも多くありますので、レースにおいても重要な要素になることは間違いないと思います。
また、ファン側としてはトレードマークになるのも嬉しいですね。
馬具いっぱい付けてる馬をもし見かけたら、注意力散漫で大変なんだろうなぁと思うとなんとなく好きになりそうです。
ぜひみなさんも馬具に注目してレースや馬を見てみましょう!