リアルなお金の話 生産牧場開業までの道のり6 最終回
もくしっこブラックバカラ22は離乳も終わり順調に成長しています。
急に体高が伸びて大きくなりました。
日々の牧場奮闘記をYouTubeにアップしているのでそちらもご覧ください。
ブラックバカラ22の離乳の様子やその後の様子などの動画もあります。
生産牧場開業までの出来事を6回にわたってまとめてみました。だらだらと長くなってしまいましたが読んでくださった方ありがとうございます。
新規就農では土地探しとともに資金の事が大きな問題になるそうです。この最終回ではそのことについて経験したことをまとめました。
夢だった生産牧場を始めることが出来ました。
このシリーズの目的である生産牧場として独立するまでの経緯は前回までで書き終えたので、そこで完結することも出来たのですが何か足りないと思っていました。
独立するには色々な方法がありその中の一つとして私の場合を紹介してみましたが、どんな手順であっても経済活動なのでお金の話に触れないと中身が半分以下になっているように思えます。いろいろな心配事も一つずつ解決していきましたがお金については具体的な事柄に遭遇しない限り実際問題としての姿が見えません。
まだ牧場を始めて2年間が経過しようとしているに過ぎませんが、いつかは独立を夢見て頑張っているホースマン達がこのシリーズを読んでくれた時に少しでも役に立てるように2年間のお金の流れを紹介させてもらいます。
生産牧場の資金の流れとして大きな特徴はとにかく資金の回収に時間がかかるという事です。私の場合では繁殖牝馬ストームエンジェルを手に入れ種付けして産駒を得て(今はここ)来年セリに上場する予定です。つまり
2020年11月 ストームエンジェルを手に入れる
2021年 ラブリーデイを種付けする
2022年2月7日 出産(牝) ← 今はここ
2023年8月 サマーセール上場予定
となりお金になるまでに3年かかります。その間には牧場を整備し、種付け代を払い、馬を飼育するための資金がかかり続けます。
馬を育てるのにかかる費用は経費となり、実際に使ってなくなったお金は経済活動として使い切ったお金として処理されますが、種付け代と整備資金は違います。現金は実際に支払って減りますが、帳簿上では種付け代はお腹の中の子供、整備資金は牧柵やトラクターという資産に変わるだけ。つまり手元のお金は減っているけれど資産として残っているので、すぐに経費として計上できません。生産馬が売れた時に種付け代は経費となります。また、整備資金は減価償却費として数年かけて少しずつ経費となっていきます。
つまり商品である生産馬が売れるまでは先行投資としてお金が出ていくばかりで、資産が減るわけではないので経費として計上もできず、キャッシュフロー的に苦しい状態なのです。
牧場に従事していましたが一般的なサラリーマンと給料体系は変わりません。ごくごく一般的な生活を送ってきたホースマンが経営者になると普段から扱う金額の位が一つから二つ変わってきます。このあたりの変化にもなかなか慣れるものではありませんでした。
借りる牧場の規模や施設の状態などにより先行投資額は全く違うと思いますが、私の場合の収支を少し紹介します。
まずは2年間での先行投資ですが
牧場事務所の改造費
給湯器設置
体重計
牧柵
トラクター
馬運車
種付け代(2年分)
厩舎修繕費(カメラの設置などを含む)
とさっと計算しただけでも約800万円かかっています。これらは生産牧場として最低限の事が出来るための設備投資であり、本当はもっともっとやりたい事もあるのですが徐々に徐々に手をつけていきたいです。
前回にも少し書きましたが新規に就農した場合、国からの補助金を利用することが出来ます。私は「農業次世代人材投資資金(経営開始型)」を利用することが出来ました。経営が安定するまで収入に応じて最大5年間・年150万円の上限で補助金を交付してもらえる制度です。こうした制度があるのでしっかりと活用させてもらっています。
この制度を申請したのは2020年なので今は少し条件が変わっているようですが、改善していただけたらいい点があります。あくまで収入に対しての補助金なので先に言ったように減価償却の対象となる先行投資したものには関係なく、手元に現金はないのですが黒字であるとみなされて、3年目以降は交付を受けるのがかなり難しそうです。農業には機械など先行投資をせざるを得ない部分も多くそれを見てもらえないのはかなり苦しいです。
とは言っても補助金がなくてもしっかり経営できるよう早く軌道に乗せることが大事なので、それを目指して努力しているところです。
初期投資額の大きさは想像以上でした。そんな牧場経営を助けてくれたのが預託馬です。いろいろな繋がりから馬主さんが預けてくれました。右も左も分からないような新規参入者に大事な繁殖牝馬を預けてくださった馬主さんの期待にこたえられるように頑張ることが一番の恩返しと思い日々頑張っています。