そして独立へ・各種手続きと牧場の準備 生産牧場開業までの道のり5
雨続きの6月で生産牧場では牧草作業が出来ずただただ我慢するしかありません。
乾草牧草は冬の間の保存食で、出来不出来が競走馬生産に大きな影響を与えます。牧草を作るには晴れの日が4日間続かないといけません。早く晴れろと祈るのみです。
日々の牧場奮闘記をYouTubeにアップしているのでそちらもご覧ください。
晴れた日にドローンを飛ばして牧場を撮ってみました。
航空法が改正されました。ドローンを飛ばすのがまた大変になりました。この動画は改正前に撮ったものです。ただただ牧場の様子を撮るためだけなんですが、なかなか大変です。今後はどうしよっかな・・・。
浦河町絵笛の田中哲実さんの牧場を借りられることになり生産牧場の拠点が決まりました。
新規に牧場を始める場合いろいろな方法があると思います。以前に言ったとおり農地を借りるためには農業委員会の承認を得ないといけませんが、牧場の一角を借りて馬主さんの預託馬をさらに預託するという形にして労働力を自分自身で提供すれば、形の上では農地を借りた事にはならないと思います。しかし教科書通りの新規開業には多くのメリットがあります。それを利用することで経営や生活の安定に早期に近づけると思います。
私の独立の形はネットや本で書かれているような新規就農の教科書的な方法だったと思います。そのために多くの手続きをしました。役場や農業委員会、農協の営農部からもいろいろなアドバイスをもらいながらしていきました。
農地取得のための営農計画
農業委員会で土地を借りる承認を得るために5カ年の営農計画を作ります。農業収入が5年後にいくらになり、その内何%以上が生産物による収益になるかを細かく作ります。サラブレッド生産は農業なので自己生産馬で収益を一定以上得る目標を立てないとなりません。農地は個人資産ですが、日本の大事な土地なので(税金などで優遇されているという意味です)農業生産物をしっかり生み出さないといけません。預託収入は残念ながら農業生産物にならないので経営安定のための預託馬を集めつつしっかりと自己生産馬を作る計画を立てました。
認定新規就農者
日本の農業では後継者不足が長年問題になっています。「青年等就農計画制度」という一定の条件を満たした新規就農者を制度的に認定し育成を図る国の制度があります。後継者不足を解消し若者が農業をしやすいようにサポートしてくれる制度です。認定されるといろいろなサポートを受けられるの活用しない手はありません。そのために青年等就農計画認定申請書を作成し市町村へ提出します。
土地や牧場施設の貸借の契約書
農地の貸借は市町村の許可をもらい国に認めてもらうことになります。しかし国から借りるわけではありません。貸主と借主の間で契約書を結び、それを提出して農業委員会を通して許可を得ます。一方厩舎やトラクターなどの牧場施設は所有者のものなので土地とは別に契約書を作ります。
開業届け
個人事業を開業したことを税務署に届けます。提出しなくても罰則はないそうですが同時に屋号も登録できるので、提出したことで気持ちが引き締まりました。当然屋号はHorsy Coffee House ホーシィコーヒーハウスです。
他にも細かい手続きもありましたがそれらもこなしながら、同時に牧場を始める準備をしていきました。功労馬牧場としては多少の施設の老朽化は問題ありませんでしたが生産を始めるとなるとそのような箇所は怪我の危険性が上がるため修復しておかないと馬を迎え入れる事は出来ません。安全に放牧できるように牧柵の整備と厩舎の修繕が必要です。
そして馬も集めなければなりません。馬主さんの知り合いがいない状態での独立だったので、知り合いの方々に何かのご縁があったらとお願いしていました。
最初に見つかったのがストームエンジェルでした。ダイナカールの子孫が最初の所有馬になるとは夢にも思っていませんでした。
それからは近くの生産者が上がり馬を預けてくださいました。11月・12月頃の生産牧場には出産を数か月後に控えている繁殖牝馬が多くいます。と同時に新規の繁殖牝馬として競馬場から牧場に戻ってくる牝馬を迎え入れなければなりません。彼女らのことを「上がり馬」と呼びますが、競馬場や育成場から直接生産牧場に戻ってくると望まない病原菌を運んできてしまい牧場にいる繁殖牝馬が流産してしまうことがあります。隔離厩舎がある場合はいいのですが、無い牧場は秋から冬以降の受け入れが困難になってきます。厩舎が三つあり、その時点で妊娠馬がいなかった私の牧場では受け入れる事が可能でした。
さらに知り合いの方を通し馬主さんを紹介していただき繁殖牝馬を預けてくださることになりました。どこの馬の骨かわからないような私に馬を預けてくださった方々には感謝してもしきれません。その方々にすこしでも喜んで楽しんでいただけるような馬づくりを心掛けています。
2020年12月1日、税務署へ開業届を提出しました。夢に見ていた生産牧場開業が出来、名馬づくりへの一歩を踏み出しました。
続く…。